Complete text -- "伊勢屋"
20 April
伊勢屋
四月十八日
高田渡さんの葬儀が11時から吉祥寺の教会で行われる事を知ったのは、その日の11時30分頃だった。その時、急げば出棺には間に合ったかも知れないが、内々で、とも聞いていたので、見合わせた。
おそらく「いせや」になだれ込むであろう事は、予想が着いたので、午後、吉祥寺に向った。が、こういう時に限って、時刻表を確認しなかった。一時間に電車が三本しかない、我が家最寄りの駅に着く直前に、上りが発車したばかり。20分駅で待つ事になる。ふと、渡さんの事でメールをくれた藤原マヒト氏のことを思い出し、彼に電話。すると、葬儀の帰宅途中との事で「いせや」には寄ったらしいのだが、一杯で浄めて、帰路についたらしい。奴にとっては、渡りに船、吉祥寺に戻る、と言う。
「いせや」は白い煙を吐き、いつもどうりの佇まい。店内を見渡しても、喪服の方々は見られないので、皆、二階にいるのだな、と思いつつも、やはりカウンターで一杯。ここでは渡さんと3、4回は飲んでいる。なんて、しみじみと独酌していると、藤原くん登場。少し説明すると、鍵盤奏者である藤原くんは私の飲み友達と言っても良い。ただ、私は彼のペースで飲む事は出来ない。酒豪、居酒屋道の先輩、そして、はじめて入った飲み屋でも「つけ」が出来るキャラクターなのだ。その藤原くんと以前この「いせや」で飲んでいた時は、渡さんも一緒だったんだよな、と感慨にふけり、二人で酒を酌み交わす。その時、向こうから自転車でやって来たのは久住昌之さんだ。すれ違い様にごあいさつ。まったくいつもの吉祥寺だ。
二人で一杯ずつのみ、二階に合流。皆、楽しく、明るく飲んでいる。が、渡さんの遺影を見つけた一瞬、泣きそうになる。それでも、その後、漣くんや宮武希さんといつもどおりに飲み、葬儀の様子を聞く。
結構飲んだが、まだ明るい。そして「のろ」へ移動。だが、河岸をかえると、しめっぽくもなる。あたりまえだ、葬儀の後なのだ。ほんの些細な意見の食い違いを丸く納めたく無くなるようなことがあっても、別段、不思議じゃあ無い。
かなり酔ってきたが、酒豪、藤原氏、まだまだの様子。終電も気になる時間になったが、渡さんを偲び、もう一件「ハバナ・ムーン」へ。
私はどちらかと言うと、河岸をかえると、酔いが回るタイプだが、酒豪藤原氏は全く逆。河岸をかえると、再び一から、なのだ。
灰太郎くんや小林くん(私のレッスン生の一人)と合流し、飲む。酔う。あまり覚えてはいない。マスターの木下さんがThe BandのBig PinkとStage Flightをかけた。リチャード・マニュエルの声に泣いた。本当に、恥ずかしながら、トイレで涙を拭った。
とっくに終電は無くなり、小林くんとタクシーで帰路に着く。何か会話したか、眠ったかも記憶に無い。
結局、高田渡さんにかこつけて、飲んでいた一日だった。 が、おそらく許してくれるであろう、と都合良く思った。
22:57:43 |
skri |
|
TrackBacks
Comments
コメントがありません
Add Comments
トラックバック
トラックバックURL