Complete text -- "WORLD STANDARD『ALABASTER』"

16 November

WORLD STANDARD『ALABASTER』



 さて、昨日からワールド・スタンダードの11/27,28の20th Anniversaryのリハーサルが始まった。今週末は楽しみな藤原大輔君とのデュオ、等あるが、11月後半はワルスタ週間と言えよう。(前半は太田惠資さん週間)




 少し前に新作の『雪花石膏』が届いて、隙あらば良く聴いていた。タイトルからも連想されるように、これは惣一朗さんの「雪の世界」だな、と本人にも言ってしまったが、それは表層的な事。実はこのアルバムを聴き込むといろいろな事に対峙させられるので、正直少し恐いというか、嫌(というのは逃げ)なのだ。どの曲も美しくシンプルなメロディーのリフレインが寄せては返しと、聴けば聴く程その中に気持ちを埋めていくのだが、深くなるにしたがってジャケットの幾つかの写真のような自分が思い浮かぶ。ジャケットではハッピーな写真だが、そこに自分が投影されるとたちが悪い。どちらかといえば、過去の善からぬ思い出や辛かった事の方が鮮明。まだ思い出だけならノスタルジーで終わるが、これが現在〜未来と見事に繋がっているし、そうなると大袈裟だが、自分の歴史を自分で見ている気になるのだ。ところが匿名性が強い訳では無く、むしろワルスタ特有のサウンドデザインは貫かれながらも、ちらりほらりと、演奏者の顔も見える。ああ、なるほど、だから走馬灯感も増す訳だ。前3作はディスカバーアメリカ・シリーズで、今回はそのアメリカというベールが無くなりよりあらわになったが、根本は同じ。だからよりタフでストロング。だが、聴き続けると途方に暮れるのもまた事実。最終曲「SALT,SUN AND TIME」(タイトルだけ見た時、BCのカバーだと思ったがオリジナル)はいくら賛辞を重ねても素晴らしさを言い表せないが、アルバムを通して聴くと、この曲のエンディングのフェイドアウトで絶望感に苛まれる事すらある。こんな圧倒的なフェイドアウトは聴いた事があっただろうか。大傑作なのにたちが悪い。もとい大傑作だからたちが悪いのか。一つだけ苦言と言うか、そこが良さでもあるのだが、惣ちゃん、磨き過ぎ(笑)。


22:38:53 | skri | | TrackBacks
Comments

N.MORISHITA wrote:

桜井さんの『ALABASTER』についてのご感想、興味深く拝見いたしました。
ワールドスタンダードの作品は、まだ全部聴いていないのですが、今まで聴いた作品に関しては、まだ自分の年齢が一桁だった頃に見えていた風景を思い起こさせるところがとても印象的で、それがワールドスタンダードの音楽に最もひかれる所以なのかもしれないと思います。
ところが、『ALABASTER』に関しては、不思議とそのような風景は見えてこなくて聴いていると、ただただとにかく音に埋もれてしまって身をまかせている自分に気づきます。
サウンドデザインは、これまでのワルスタと一貫しているようにも思えるし、実は今までとはちょっと違うのかな、という気にもさせられます。
このアルバムを最初に聴いた時に、なんて凍てついた音楽なのだろう、と思いました。特に「SALT,SUN &TIME」は、雪を通り越して、凍っているかのような。切り立った崖のようなところで鳴らされているような。そのあたりが今まで聴いた作品と違うような気がします。ある種の厳しさ、のようなものを感じるのです。絶望的、というのはたしかにそんな気がします。ものすごく美しいのだけれども、圧倒的な絶望感。

磨き過ぎ、というのは絶妙ですね。ものすごく余分な部分を削ぎ落とした彫刻のようにシンプルなたたずまい、純粋で混じりっけのない、ワールドスタンダードという音楽の結晶を顕微鏡で眺めているような気分なのです。

私は「SUNNY STREET」のちょっとだけ音が揺らぐところと、「SALT,SUN&TIME」のピアノの音を聴いていると、その音があって、それを自分が聴いていてもうそれだけで充分という気持ちになってしまい、なにも考えられずに頭の中がまっさらになるような気がします。

このアルバムを丁寧に聴いておられる方の感想はとても聞いてみたいので、桜井さんの感想を拝見させていただき、とてもうれしかったです。
これから聴き続けていくうちに、その時々によって感じ方が変わってくるのかもしれません。

このアルバムのどういったところに自分がひかれるのか、という漠然とした謎がありながらも、このままずっと謎のままでもいいかなあと思えてしまうようなアルバムのように思います。

ちなみに私が初めてワールドスタンダードのアルバムを聴いたのは、1999年の終わり頃だったと思います。桜井さんが初めてワールドスタンダードを聴かれたのは、いつ頃でしょうか? そして、これはずっと聞いてみたかったのですが、桜井さんが鈴木惣一朗さんと初めて一緒に演奏されたのは、いつ頃で、どのような形での演奏だったのでしょうか? よろしければお聞かせください。

長文お許しください!

長文お許しください。
11/20/04 00:17:24
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