Archive for 25 April 2020

25 April

monaural 4


 先日の木下さんへの返信でその後、モノラルからステレオへ、なんて簡単に書いてしまったのだが、ふと気になって色々引っ張り出して聴いてみた。
 まず、T-Bone Walker / his original 1942~1947 performance。東芝EMI日本盤LPで、解説は中村とうよう氏。かなり興味深い解説で流石の日本盤だが、末尾に1974と記されている。なので、1974~75年の日本発売であったことは間違いない。コンパイルも中村氏で原盤はCapital、Black&White、Cometだが、この1974年当時にはキャピトルが買い取っていたものであっただろう。ジャケット裏にレコーディングデータも載っているが、例えば、Lonesome Woman Bluesだと録音は1947年で初リリースのレコード番号はComet T50となっている。1947か48年のリリースなので、想像はつくが、一応画像検索してみたら、オリジナルはSP盤。だが、このアルバムはSPおこしではなく、モノラルのマスターテープ(のコピー、おそらくLR2トラックのモノラル)から作られている。市場には民生用にSPでのリリースだったが、マスターはテープ録音だ。T-Boneより10年ほど前のRobert JohnsonはSPダイレクトカッティングで、King of Delta Blues Singers Vol2のジャケットイラストはあながち嘘ではないだろう。
 そして、1955年録音のLennie Tristano / Tristano。録音テープの速度を変えてダビングしたり等、色々実験的なことがまず浮かぶ作品だが、まずこの録音はレコーダーが2トラックではないと出来ない。曲にとっては2トラック2台だったかもしれない。その実験的なA面のトリオ編成はモノラル、B面リー・コニッツを迎えたカルテットのライヴはステレオである。リリース当時のアルバムはAB面全てモノラルだったであろうが、この録音を聴くとB面は多分ステレオマスターが本領だったのではないか、とさえ思う。それはさておき、1955年の段階である程度の業務用レベルではステレオレコーダーが使われていたことは間違いない。
 で、あえて書くまでもないが、1963年 with the Beatles。このアルバムよりビートルズはモノラルとステレオを同時発売。単純に作り手の立場を考えると、まだステレオの普及率がそれほどではなかったが新しい技術にも力を入れるのは当然であろう。だからステレオもモノと同様既にオリジナルなのだ。
 最後に少し前にも書いたTraffic 1stの紙ジャケットCD。1967年。これがイギリスでのオリジナル盤!みたいな触れこみで実際モノラルもオリジナルだが、製作者側の意図は明らかにステレオだ。この辺り、ビートルズより、新興レーベルだったアイランドの方が風通しがよかったのではないかと思う。どうしてもビートルズはデータもかなり残っているので、基準になりがちだが、そうではないなと。

 とりあえず、続きはまた。

23:46:00 | skri | No comments | TrackBacks