Archive for April 2020

26 April

monaural 5


 with the Beatles、ステレオとモノラルどちらが好きか、と聞かれれば、モノラルの方が自然に聴けるし好きだ。ただ何故このようなステレオミックスになったのかは、少し気になる。ジョージ・マーティンがステレオに乗り気でなかったとか、随分経ってからジェフ・エメリックがサージェントペパーズ はモノラルが本当の音、とか、初回プレスはともかく、その後の来日20周年記念のモノラル盤まで結構な高値がついていたり、とビートルズのモノラル神話はぐんぐん高くなる。私自身はそんなに詳しくなく、これも調べながら書いている訳ではないのだが、ステレオに関してはミックスをあえて作ったものや、モノラルを電気的に処理したものが混在していると思われる。収録時間、フェイドアウト、エコーのかかり具合等、手作業なのでミックスが違えば同じテイクでもタイミングは変わってくるのは当たり前。マーティンがステレオミックスに積極的でなかったという説は何と無く頷ける。なにせ1963年当時はEMI社員、保守と冒険の狭間で考えたに違いない。おそらく、当時一番一般家庭に普及していたセパレートではないアンサンブルステレオを念頭においたのではないか。今で言うと、ミックス時にラジカセでも聴いてみるような感じだ。アンサンブルステレオの場合、左右のスピーカーの距離はレコードプレーヤー分の50~60cm、おそらくリヴィングルームの壁を背に置く場合が多いので、聴き手の右または左、あるいは正面等色々なリスニングポジションを想定して、尚且つ、モノラルミックスとの差異がわかりやすいようにしたのだ。(多分この頃はステレオ盤の価格の方が少し高かったはず)要するに自分が好きに聴こえる場所で楽しめる範囲を広げた訳だ。これはオーティス・レディングのステレオにも共通するかな。
 そして4年ほど経ってのアイランドのトラフィック1st。これはもうシングル以外はステレオミックスが本領でモノラルも別に作っていないと思われる。新しいレーベルが新しい世代にできる限り効果が上がるステレオミックスを提供したと思われる音だ。モノラルミックスは特にミックスではなく、ステレオの電気的なモノラル化。変な言い方だが、擬似モノラルだな。
 chessの話は、次回かな。

23:33:53 | skri | No comments | TrackBacks

25 April

monaural 4


 先日の木下さんへの返信でその後、モノラルからステレオへ、なんて簡単に書いてしまったのだが、ふと気になって色々引っ張り出して聴いてみた。
 まず、T-Bone Walker / his original 1942~1947 performance。東芝EMI日本盤LPで、解説は中村とうよう氏。かなり興味深い解説で流石の日本盤だが、末尾に1974と記されている。なので、1974~75年の日本発売であったことは間違いない。コンパイルも中村氏で原盤はCapital、Black&White、Cometだが、この1974年当時にはキャピトルが買い取っていたものであっただろう。ジャケット裏にレコーディングデータも載っているが、例えば、Lonesome Woman Bluesだと録音は1947年で初リリースのレコード番号はComet T50となっている。1947か48年のリリースなので、想像はつくが、一応画像検索してみたら、オリジナルはSP盤。だが、このアルバムはSPおこしではなく、モノラルのマスターテープ(のコピー、おそらくLR2トラックのモノラル)から作られている。市場には民生用にSPでのリリースだったが、マスターはテープ録音だ。T-Boneより10年ほど前のRobert JohnsonはSPダイレクトカッティングで、King of Delta Blues Singers Vol2のジャケットイラストはあながち嘘ではないだろう。
 そして、1955年録音のLennie Tristano / Tristano。録音テープの速度を変えてダビングしたり等、色々実験的なことがまず浮かぶ作品だが、まずこの録音はレコーダーが2トラックではないと出来ない。曲にとっては2トラック2台だったかもしれない。その実験的なA面のトリオ編成はモノラル、B面リー・コニッツを迎えたカルテットのライヴはステレオである。リリース当時のアルバムはAB面全てモノラルだったであろうが、この録音を聴くとB面は多分ステレオマスターが本領だったのではないか、とさえ思う。それはさておき、1955年の段階である程度の業務用レベルではステレオレコーダーが使われていたことは間違いない。
 で、あえて書くまでもないが、1963年 with the Beatles。このアルバムよりビートルズはモノラルとステレオを同時発売。単純に作り手の立場を考えると、まだステレオの普及率がそれほどではなかったが新しい技術にも力を入れるのは当然であろう。だからステレオもモノと同様既にオリジナルなのだ。
 最後に少し前にも書いたTraffic 1stの紙ジャケットCD。1967年。これがイギリスでのオリジナル盤!みたいな触れこみで実際モノラルもオリジナルだが、製作者側の意図は明らかにステレオだ。この辺り、ビートルズより、新興レーベルだったアイランドの方が風通しがよかったのではないかと思う。どうしてもビートルズはデータもかなり残っているので、基準になりがちだが、そうではないなと。

 とりあえず、続きはまた。

23:46:00 | skri | No comments | TrackBacks

23 April

monaural 3


 さて、モノラルの件の続き。結局、一つのスピーカーを新たに設置することにしたのだが、まず手持ちの中から選定。タンノイM20、デノンSC-E212、ギターアンプ用のジェンセンC10Rとこれまたギター用に使っているダイアトーンP610DB。タンノイはバスレフ2way、デノンは密閉2way、ギター用は共に後面開放である。通常であればP610DBを適切なエンクロージャーにつけることが望ましいであろうが、まず1スピーカー設置でどこまで追い込めるのか、色々試したかったのだ。リファレンスはアナログがベスト・オブ・マディ・ウォーターズ、ハーブ・エリス / Nothing but the blues、ビートルズ / ラバーソウル(全て日本盤)、CDがブロッサム・ディアリー / Give him the ooh la la、ニッポンジャズ水滸伝 天之巻、キンクス / ヴィレッジグリーン。CDもリファレンスに入れたのは確実にLRが同じだからである。
 そして結果。一番モノらしい気分はC10Rだが、職業柄かもう少しクリアさと上下レンジが欲しい。P610DBはやはり容量、バッフル板の不足は一聴瞭然。SC-E212は気持ちは良いがちょっと高域が落ち着きすぎ、ものによってはミドルが抜けない感じ。M20はモノらしい気はしないのだが、それは慣れか?結局ハーブ・エリスのコリッとした部分が出ていたM20に決定したが、ブロッサム・ディアリーの一曲目のベースには遅れをとっている感じで、これはSC-E212の方が好みか。(この二枚偶然にも1957年録音でエリスとレイ・ブラウン参加)
 それにしてもChessのいくつかアルバムがステレオになっている事に今更ながらに気づき愕然とした。所有のベスト・オブ・マディ・ウォーターズは日本ビクターのモノラルだが、40年代後半から50年代にかけての有名曲は本当に素晴らしい。特にベースのビッグ・クロフォードとのデュオはなんと斬新でクリエイティビティにあふれていることか。そしてこの驚きはモノラル1スピーカーでないと味わえないと断言できるほどだ。

 先日のモノラルカートリッジの件、ちょっと分かり難かったかと思うので、ちょっと追加。ステレオが開発されてからもモノラルは10年ほどは一般的だった。モノラルしかない頃は、左右同等の溝を刻むことができたが、ステレオ開発以降(もちろんメーカーによるが)ステレオも作ることができる機器でモノラルのマスターを作っていた可能性が高い。となると復刻ものはもちろんのこと、オリジナル盤でも年代によってはその可能性が高い。なので、モノラルでも溝の形成に上下の運動が加味されるかもしれないのだ。真のモノラル・カッティングは左右の溝が完全に同等。であれば上下振動がほとんどない、SP針のようなカンチレバーが望ましいのではないかと思うのだが、現行の商品では見当たらず、もうヴィンテージオーディオの世界になるが、LPはともかくEPはそのあたりの違いは如実に出るであろう。ただ1958年以降盤によってその違いを知ることはこれまた難しいに違いない。


23:50:00 | skri | No comments | TrackBacks

21 April

monaural 2


 フェイスブックで元ハバナムーン店主の木下さんとモノラルについてやりとりしたので、かいつまんで載せます。

 たまたまchessのモノ盤をよく聴いていて、モノラル再生について色々試しています。モノラルカートリッジの現行品は様々な理由でどうも触手が伸びず、ステレオを配線改造でモノラル化しました。カートリッジの話はとても長くなるので、ここには書きませんが、問題はスピーカー一つでいかに再生するか、ということでしょうか。という訳で先ほどモノ用のスピーカーを設置してアンプでRIAAカーブをいじっております。

 (木下さんがオルトフォンのステレオ対応のモノラルカートリッジと使っている件を受けて)

 ステレオ対応のモノラル針は、ステレオ針同様に垂直方向にもカンチレバーが動くので、ステレオ盤を傷めないようにしている、ということです。SPはわかりませんが、ビニール盤だと45/45の左右の溝なので、溝の底には情報はありません。要するに左右同等に溝で針は左右にだけ動けば良いのです。(事実SP針は上下の動きとても硬い)ステレオの登場は1958年頃ですが、モノラルがなくなるのは1970年頃。モノラル専用のマスターで左右同等に音溝があるのと、左右違った音溝がある、故に垂直方向にも針が動くステレオと、その機器の仕様が影響されるのです。要するにステレオも作ることができる機器でモノラルを作っても多少誤差があり、事実復刻のモノ盤でも集中して聴いていると、あれ、と思う瞬間が時折あります。ステレオ導入が遅れたメーカーのものであれば、(多分チェスやコブラはそうだと思う)ステレオ対応ではないモノラル針が本領を発揮することでしょう。しかしその50年代後半から60年代後半の約10年間の録音とその技術、恐れ入りますよ。

 (かつて吉祥寺にあった1スピーカー再生の喫茶店がとても良い音だった。そこの謎のシステムは通常のアンプに真空管の機器が接続されていた、という件を受けて)

 その謎の真空管というのはおそらくEQ的なものでしょうね。1スピーカー再生は私のここ最近の試行錯誤だとローがよく出る代わりにその上がちょっと寂しい感じです。ステレオ2スピーカー再生の逆相のノイズキャンセルも無くなりますから、カットされる帯域もあるかと思います。ですからその補正で300〜600位をちょっと持ち上げるのがいいような気もしています。何よりモノラルはスピーカーの正面で聴く必要がないのが、良いです。

23:47:00 | skri | No comments | TrackBacks

20 April

monaural


 2ヶ月ほど前、ライヴ後の打ち上げでSP盤再生について、中尾勘二さんに話を聞いたことがあった。私が1聞くと100は返してくれる。とても覚えきれる情報量ではないので、その夜のキーワードだけは記憶して帰った。RIAA、セラミック針、圧電式カートリッジ等々。昔、小学校にあったレコードプレーヤーのアームの先が回転できてSP用とEP,LP用を選べるという代物は、確かに運動会なんかで見たことがあったな、あれが圧電式だったか、と大変興味深い話で、あの回転アームがむくむくと記憶から朧げながら蘇ったのだ。
 ただ、そのプレーヤーを探そう(ハードオフで偶然見つけたら気になるけど)という訳ではなく、先ずは現状のSP再生状況をちょっと改善出来ればと考えてみた。
 私のSP再生はDJ用のレコードプレーヤーで78回転が使えるスタントンT80でカートリッジはシュアSC35CにJICOのSP針。これはSP専用に使っているものだ。
 さて、手軽にグレードアップということで、このカートリッジをモノラル配線にしてみた。
 
 

 いつもはアンプ側でモノラルに切り替えていたが、カートリッジのモノラル配線の方がSNが大分改善され、何より音が近くなった。大好きな安川加寿子のトロイメライとかコニー・アイランダーズのエル・チョクロとか他にもまあとにかく素晴らしい。
 そして折角なので、EP,LP用にもモノラル配線のカートリッジを作ってみた。手持ちの使っていないものから、勢いと針圧でオーディオテクニカAT10Gを選んだ。これでリトル・ウォルター Blue Lightを聴いてみた。凄くいい。迫り来る感じと謎の音像。まるでキング・タビーが何かしようとして、ここまででいいかな、というダブじゃないけど、それを予感させる響きの迫力はモノラルならではか。
 モノラル針とチェスレコードLP盤の話はまた今度だが、モノラル用に別スピーカーを一つだけ設置してみようか、とも思っている。

23:21:00 | skri | No comments | TrackBacks