Archive for January 2018

19 January

このレコードを聴くな その1


Country Joe McDonald / LOVE IS A FIRE (1976)

 今のレコード棚が完成して、かれこれ4〜5年は経つ。当初は余裕で収められていたレコード達もいつしか棚の中で窮屈になり、取り出しが困難になり始めた。レコード棚が完成した時から、並び替えた順番で暇をみつけては丁寧にクリーニングをして、収まった順番に全て聴いていくこと4〜5年。勿論断続的だが、ようやく半分くらいか。その間、処分したものも少なく無いが、やはり増えたものの数の方が多い様で、前述のとおり棚に全く余裕がない。なのでやはり自分にとって不必要なものは処分することを検討しているのだが、その前に何故それが駄目なのか、もう一度良く聴いてみようと思った訳だ。

 Country Joe McDonald / Love is a Fire 実はこれまでも幾度となく、処分リストに上がったものだが、フェイバリット・ギタリストの一人 Ralph Washの参加作品という分かりやすい理由で、未だ手元にある。久しぶりに針を落としてみたが、やはりこりゃ酷い、が、どうやら今まで処分しなかった理由がWashの参加以外にも、何気なく感じていたことが明確になった気がした。

 カントリー・ジョーというラジカルな、そしてウッドストックで名を馳せバスカーの逞しさを持つ男、その時代からかトリック・スター的な印象も無きにしもあらずな男、をいかに1970年代中期にビルボードチャートやラジオのパワープレイ、はたまた映画やドラマとのタイアップでポップスのプロの歌手に仕立て上げようという作りがとても興味深いのだ。

 私が今所有しているカントリー・ジョーのレコードはこれとウッドストックに過ぎない。この直後のアルバムだったと思うが(Goodbye Bluesというタイトルだったか)ファンタジーでの3枚目は随分前に処分してしまったし、80年代後半のCDもかなり前に手放した。両方ともあまり良い印象は無いし、あまり覚えてもいない。が、今でも買おうと思っているのが、Country Joe & the Fish の1st。これはとある場所で聴いて、とても音が良かった記憶がある。あのフラワー・ムーブメントの中できちんと録音されたアルバムに感じたのだが、そんな発見してからもう十年くらいは経つか。

 さて、この Love is a Fire は、まずジム・ゴードンのフィルで幕を開ける。ドラムの音がやけにタイトになり始める時代に差し掛かっている訳で、ここでもその影響は隠せないが、素晴らしく安心した音だ。プレイもアレンジャーの Jim Ed Norman が指定したであろういくつかの箇所を除けば申し分無い。が、これはこのアルバムの弱点をあぶり出していて、何気ないドラムのプレイと音に耳を奪われてしまうのだ。ジョー御代の存在はひとまず置いておいて、ベースのデヴィッド・ヘイズはこれまでの数々の名演の良さはここではほとんど発揮されていない。程よいリリースの的確なキックとのコンビネーションは悪過ぎる箇所が散見される。特に8分音符が2つ連なる箇所は本人の苦悩さえ見え隠れするようなもやもやさだ。ようするにゴードンはこのディスコ〜ニュー・ウェイブ的なものに自身の解釈で対応したのだが、ヘイズはそうではなかったのだ。そしてゴードンはドラムスのチューニングとプレイのクールさでこのアルバムに貢献したが、それとは別のアプローチで一役買ったのが地味ながらもラルフ・ウォッシュ。ウォッシュの参加曲はそう多くないと思われるが、エレキの音色はそのままにディスコ風味に貢献しているし、ほんの少ししか分からないが、やはり独特の間があり、アレンジャー指定のフレーズをユニゾンする時でもその発音は耳を惹く。1曲くらいウォッシュのギターソロが出て来ても良いのでは、とも思ったりしたが、このアルバムはどんな楽器のソロもほぼ無い。ノーマンとプロデューサーの Jim Stean がかなり仕切っていたことは想像に容易い。

 たしかこのアルバムはファンタジーでの2作目だったかと思う。次作もファンタジーという事を考えれば、そしてカントリー・ジョー・マクドナルドというアメリカンロック界のそれなりのネームバリューという事も考慮すれば、この時代、契約金ありの3枚契約だった可能性もある。だとすれば、前作の売上は芳しくなく、勝負を賭けざるを得なかったのが今作で、そして数字的にも失敗。次作は「ああ、あれは俺の身の丈とはちょっと違っていたから、古い曲もやってみるか。もう契約も最後だし」なんてことを思ったのかも知れない。

 ともあれ、もうちょっと細かく楽曲を探ってみようと、もう一度ターンテーブルに載せてみる。
 まず冒頭、こりゃディスコだ、曲順としてはこれはアルバム一曲目しかありえないように感じるが、だからこその勝負。だがウォッシュの地味に奥深くミックスされた存在は一聴では分からないが、独特で悪くない。A2はノーマンのアレンジのダサさというか気負い過ぎだったのか。リズムブレイクがかっこ悪いしジョー自身も対応出来ているとは言いがたい。曲調としてはシングル候補だったのか。だが歌唱力に難ありだったのかコーラスアレンジはちょっと派手。A3、ここらで落ち着き、ということでカントリー調。唄も無理が無い。そしてストリングスアレンジはこのアルバムでのノーマンの最上の成果を聴かせる。A4、メロディに合わせたリズムフックが小賢しいがゴードンも無機質に対応しているのがまあ良いのか。ウォッシュであろうアコースティックギターが曲をもたせたが、何故この曲フェイドアウトなの? A面最後、こりゃポップだね。誰がカントリー・ジョーの是を望むのかとも思うが、ウォッシュも地味ながら良い仕事よ。
 B1はドラムスに耳を惹かれる。ストリングスも良い。色々な意味でベスト・トラック? さあここでカントリー風味のB2、ペダル・スティールのフィーチャーだがウォルシュのリズムも吉。B3、きました、ニュー・ウェイヴ風味。ゴードンの対応力とR&B風味のホーンでとばしたいところをついつい聴いてしまった。B4は爽やかな良い曲の感じがしたが、唄は良くないし、がBメロでちょっとずっこける。でもストリングスとコーラスのアレンジはよくやったよ、ノーマン。そしてB5はディスコ。サビは当時のキャッチーさを反映していて良い作り。ホーンもコーラスも良い。さりげないコンガも良い効果だ。ギターはかっこ悪いけど、当時のヒット曲と考えればこういうのはあったよね、という感じ。ただちょっと長いかな。

 あえて書くが、どの曲も詩が酷い。ストレートなラヴ・ソングなのだが、気の効いた表現は一切ない。ラジカルなカントリー・ジョーのイメージを逆手に取っているのか、とさえ勘ぐりたくなる程に愚直なのだ。

 私にとってはカントリー・ジョーは魅力のある歌手ではない。音程や声質等そう言うことを言うつもりは無い。このアルバムでは惹き付けられる歌ではないのだ。が、どうにかしようという、熱量は感じられなくもない。が、それ以上にどうにかしようと頑張った(失敗の部分はあるにせよ)アレンジャーのノーマンとプロデューサーのスターンの熱量は伝わり残念だったアルバムの裏の努力も垣間見える。頑張ったけど失敗した職人の仕事なのだ。

 そして極めつけは、ミックスのAl Schmitt。さすがのシュミット。プレイにちょっと難があったヘイズのベースをさりげなくし、ゴードンの音をタイトでありながら響きも最小限生かす。そしてディスコ〜ニュー・ウェイヴ感も醸し出しつつの落ち着き。これは見事。

 それほどの職人芸でも失敗作はそこそこあり得るのだが、よく聴くとその辺りが手に取るようにわかる、という作品もそう滅多にあるものではない。そう言う意味では、もう少し手元において置こうとも少し思ったが、そんなことでは一向にレコードは減らないので、処分棚に収めることにしよう。

 そうだ、音質という事で言えば、私が聴いているのは1976年発売のビクターの日本盤の見本盤。この頃の日本盤見本盤は音が良いのだ。中にはアメリカ盤よりよいと感じるものも少なく無い。こんな失敗作と思えるものでも、深聴出来たのにはそんな所為もあったのかも知れない。それはともかく、とにかく人が思いをもって作ったものには良い悪いではなく、何か特別なものが記録されていることがままあるのだ。そして、カントリー・ジョーはこのアルバムの後にローリングココナッツレヴューで来日したんじゃなかったかな。私が足を運んだのは初日のジョン・セバスチャンやフレッド・ニールだけだったので見られなかったけど。


 中学の時の担任は国語の専門だったのだが、一度、授業ではない時に「太宰治なんか読むなよ」と言った事があった。と言われれば読みたくなるのが中坊というもので、私はその頃かなり太宰を読んだのだった。 



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01 January

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 1/24(水) 矢野間健セッション 東京 阿佐ヶ谷 SOUL玉Tokyo


 1/26(金) ホープ&マッカラーズ 東京 阿佐ヶ谷 SOUL玉Tokyo

 
 詳しくはblocにて。よろしくお願いします。




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