Archive for 08 March 2009

08 March

福岡


 小城から福岡の移動はこのツアーで最も楽だった。ただ、宿泊が旅館で、チェックアウトに時間が早く、朝ゆっくりする訳には行かず。

 小城の主催者、I女史は福岡でも受付の手伝いをしてくれるので、彼女の車に同乗し、パスカルズの新譜を聴きながら、いろいろな話をする。たとえば、野戦の月の話。彼女が私の名前を知ったのも、野戦の月、だという。最初に会った時の話だが、野戦の月の首謀者、桜井大造氏と私が血縁だと思っていたらしい。かと思えば、鳥栖ICの話、福岡のスタンドバー・BEMの話、広島のアビエルトの話、等々、話題はつきる事無く、テンポは心地よい。

 間もなく、福岡・住吉神社・能楽殿に到着。数年前のイベントで松永さんと私はカルメン・マキさんのサポートで演奏した場所だが、PA仕込み中の殿内は、私がかつて感じたよりも幾分広く、ゆったりとした落ち着いた空間。そして何よりもこの場の歴史を否が応でも感じるのは、まあ、当たり前だ。

 さて、そろそろセッティングなので、白足袋を履く。セッテイングであってもここのステージは白足袋を履かなくてはならない。暖かい日中だが、板の上はやはり冷たく、足先から冷えてくる。

 潮音嬢の着物着付けスタッフも到着。彼女は大忙しで、リハーサル前から、着物支度の仕込み。その仕事ぶりを時折眺めていたが、スタッフ全員気合いが入っていて、気持ちが良い。

 福岡の主催者、Sさん夫妻には、前から随分お世話になっている。初めて会ったのは、数年前の福岡史朗君のツアーに私が少し参加した時で、その時、急遽、私のソロライヴを二本もブッキングしてくれ、それが、2006年のロンサムストリングスの福岡・博多百年蔵での公演に繋がった。なので、実際の付き合いはそれほど長く無いのだが、もう随分前から知っているような、親密さを勝手に抱いている。福岡に行った際、時間があればSさん経営の薬院の回、大名のBEMには寄る事にしている。特にBEMはスタンドバーだというのに、いつも立てなくなる程呑んでしまい、いつまでたっても格好良く酒が呑めず、宿で反省しているのだ。

 今回の公演は、私が晩秋に来福した際になんとなく話を持ちかけた訳だが、やる、と決まってからの展開が早く、こちらがなかなか迅速に対応出来なかったくらいのスピーディーさだった。そして、スペシャルなイベントにしたいという思いから、着物姿の潮音嬢、という、ナイスな提案。もう、その話を聞いた時に、こりゃ、うまくいくわ、と勝手に確信。

 で、本番は、その確信通り、素晴らしいライヴだった、と自負する。前日の小城から、このツアーでの収穫が音になって明確に表れてきた。バンドの音の集束と拡散のレスポンスが恐ろしく早く、単純に楽しい。特にロンサムストリングスのステージ後半のイマジネーションの湧き方は、過去、あまり経験した事が無い感じで、自分が弾いているような気がしないくらいだった。何かに憑かれたか。

 潮音セットの後半の彼女もすごかった。ツアー5日目で、譜面から目を離せるようになった所為で、彼女の姿をよく見る事ができた。もともと、時折、おかしな動きをするのはわかっていたが、着物姿の所為か、時々、柔らかいグニャッとしたものに見えたし、ハーレムやカンデラ〜キルトあたりでは、どこから、こんな声が出ているのだという、不思議な異様さがあり、その声が殿内に広がった瞬間は、もはや痛快だった。

 終演後、忠司座長の素早い撤収の指揮でツアー男組は移動の準備が整う。打ち上げには参加したかったが、このスケジュールでは仕方ない。Sさん夫妻、佐賀のI女史他スタッフの方々と名残惜しい挨拶をして、潮音嬢とマネージャーM女史を福岡に残し、我々は夜の高速を広島までぶっ飛ばした。

23:59:00 | skri | No comments | TrackBacks