Archive for 12 July 2013
12 July
今日のレコード 7
The Carter Brothers / Southern Country Boy [7inch single] (1964)
実は7インチに手を出す事はほとんど無い。SPも78回転がかけられない、という理由のみで同じく手を出さない。正直言うと嵌りそうで嫌だし、そんな財力もなし。
今日このシングルを聴いたのには訳がある。そうでなければ、この灼熱の午後に真っ先に聴きたいと思うものではない。
実は、レコード洗浄液の調合を間違えてしまったのだ。万能洗剤「松の力」を500mlくらいの精製水で1/20くらいで薄めて作る事ところを、間違えてアルカリ電解水に洗剤を混ぜてしまった。確かに洗浄力は増すのだが、これだとしっかり洗い流さないと、盤面に洗浄液のカスが残ってしまい、逆効果だ。とは言えもったいないので、実験も兼ね、洗剤をもう少しだけ濃くし、水で洗い流す洗浄方法を試す事にした。ただその前にドラッグストアに行き、極細の歯ブラシを買って来た。ラベルは濡らさない方が良いのだが、素早くやれば問題無し。
と言うわけで、所有するもので一番汚いと思えるのがこのシングルであった。実はこれは音楽ライターの小尾隆さんがライヴ終了後に持って来て下さったものだ。小尾さんとカーターブラザーズの話をしたことがあったかどうかは覚えていないが、シングル音痴の私でもロマン・カーターのあの声を7インチで聴いてみたい、と即座に喜び、有り難く頂戴した。もちろん賄賂じゃないよ。あれ、評論家から音楽家への袖の下っていうのはおかしな話だな。
さておき、翌日に早速聴いてみたが、音圧は感じたものの盤が汚れていて、万全な再生が出来たとは言いがたかったので、放っておいたのだ。
そして、いよいよ出番である。おお、この汚れはのぞむところ。洗浄液をまんべんなく振りかけ、5分程置く。そして、溝に沿って反時計まわりで歯ブラシを滑らせていく。時折少し力を入れ音溝のゴミをかき出すように円周に沿う。丹念にブラッシングしたあとは、水で流す。残留物が全く残らないように、念入りに水を流し、これも歯ブラシを使う。静電気対策には自然乾燥が良いのだろうが、パルプ素材のワイピングがあったので軽く拭き取る。更に念入りに精製水を霧吹き、ベンコットで丁寧に拭き取り、いちおう一時間程自然乾燥。
汚れはほぼ完全にとれたが、擦り傷はかなり多い。が、それもまた気分である。やはり凄まじい音圧でロマン・カーターの声に暑さが増す。ファルセットの出し方がよく分かっていないんじゃないか、なんて箇所がいくつかあるが、それも含めとにかく初々しい。弟のエレピも絶妙で、正直力が抜ける音なのだが、ローズやウィリッツァーの豊かさとは真逆で、なんだか新しい響きにも聴こえるし、かたやスーパー400らしき格調高きワイルドな音のギターも米南部の不思議さをかき立てる。それにこの鋼鉄のシャウトだ。その他、ホーンセクション、ドラム、リズム・ギターの塩梅は絶妙で、しかもプロダクションがかなりしっかりしていた事は伺えるが、ブレイクで間違えているのはわざとなのか、何なのか。でもこれがまた良し。
この後にジュエルから、これと同内容でデビューなのだが、という事はこのコールマン盤は案外貴重なものなのかな、と小尾さんに感謝。しかもB面はかつて発売されたアナログには入っておらず、これがまた格好良い。
ロマン・カーター、2007年にアルバム出していたんだな。Youtubeで聴いたら、あの声だった。嬉しい限りだ。
03:49:44 |
skri |
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