Complete text -- "2017 頌春"

02 January

2017 頌春


 私はというか、妻と私の我が家は特に正月らしい事はここ十数年何もしていない。朝もいつも通りトーストかサンドイッチを食べ、私が休みの日と同様に18時頃に晩酌をする。正月らしいといえば、DVDで『大脱走』か『男はつらいよ』を観る事くらいだが、今年はそれもしていない。昼過ぎに昨年事情があって遅れた仕事を少しでも前に進めようと音源の編集に取りかかるが、正月だから、という心持ちもあるのだろう、時間もそこそこに作業方針の整理のみにとどまり、机の上にある本の頁を少しだけ読み進む。島崎藤村『家』、30年程前に読んだものだが、昨年末に再読しようと本棚から取り出したものである。無骨な文体だがその簡素さの中の情報量は多く、一つの文は必ず復読しているのでなかなかに読み進まないのだ。

 昨年は割と図書館を利用し、25冊ほどは読んだか。内3冊程は音響と電気に関する専門書。あとは購入したものを含め、歴史書と小説と社会ルポだった。
 一昨年の冬に島尾敏雄の再読をし『夢の中の日常』に改めて驚き、昨年じっくり読んだ『魚雷艇学生』その素晴らしさに再読といえど読み終えたくないくらいだった。『明けの赤馬』古井由吉、現代日本文学最高峰とも言える文章家は、やはり静かに光る作品。それからついに読み始めてしまった『橋の無い川』住井すえ、まだ第一巻だが、この先数年かけてよみ続けるであろう。一昨年についに30年の禁を解き(自分がまだまだここに踏み入れたくないという意思があっただけだが)読み始めた埴谷雄高『死霊』は昨年は進む事はなく、おいておいた。ゲイリー・スナイダー『子供たちの為に』これは常に傍らに置いておきたい本だ。ブルース・チャトウィン『パタゴニア』も再読し、これもスナイダーしかり。

 近くの図書館では時折、廃棄本を無料で配布している。中東とイスラエルの歴史関係の本は、そのおかげで読む機会が増えた。数冊読んだだけでは把握しきれないのが私の今のキャパシティだ。そう言えばこの図書館の廃棄本のにカーソン・マッカラーズ『結婚式のメンバー』を発見し、これは私の本棚にもあるが、大好きな本なので救出し、本のプロとも言えるM氏に進呈した。

 昨年のある時、酒場で沖縄を巡る政治的な話で後味が悪かったので、その関係の本も図書館で借りた。『沖縄の新聞は本当に「偏向」しているのか』安田浩一、これは冷静なジャーナリズムに則った良書。

 最近の小説も読んでみようと『山女日記』湊かなえ、期待していなかったが、読み進みにつれ引き込まれた。

 島崎藤村は読んでいない作品もあるので、そこに行くか、はたまた夏目漱石の再読か読んでいないものにいくか、大学時代に嵌った後藤明生の再読か、まあ静かな読書の日々は今年も相変わらずであろう。

 しかしレコードは年間200枚は聴くが、本は25冊程か。まあ数ではないのだが。

 そうそう、最近電車の中で紙の書籍を読んでいる人は増えているのではないかな。 

         
04:24:17 | skri | | TrackBacks
Comments
コメントがありません
Add Comments
:

:

トラックバック
トラックバックURL