Complete text -- "レムスイム"

23 May

レムスイム


  音楽家の方々で、私のようにブログを書いている人は少なくないと思うが、多分、皆さんある程度、進行中の仕事について書く事もあるだろう。

 一演奏家として、録音に参加した場合、スタジオで演奏して、プロデューサーやアレンジャーやディレクターの方々に、OKと言われれば、自分の仕事は終わる。後々、サンプル盤が送られてきて、自分の仕事を確認出来る事もあるが、CD盤にならない録音も多々ある。CMや映画・ドラマのサウンドトラック(これは盤になることもあるか)やプレゼン用、コンペ用、プリプロダクション等々。自分の仕事としては演奏料受理で終わる訳だが、これらの録音が仕事として成立したかどうかは解らないのものも少なくない。
 だから、このブログでもどう使われるか解らない録音の記事を載せる場合は、名前は一切出していない。

 一日多くて300のカウントのこのブログだが、名前を出してしまった仕事の状況や行末を聞かれる事もまれにある。

 この間、大阪で「レムスイムのアルバム、進んでますか?」と聞かれた。なので、書いておこう。

 まず、三曲ミックスしたものを、大久保由希さんに聴いてもらった。a曲とb曲は従来のレムスイムらしく、シンプルな路線で、c曲は楽器は一切ダビングしていないが、極端に編集したもの。この編集したc曲は、さすがにちょっとやり過ぎかな、とも思ったが、まあ、たたき台のつもりで完成させた。大久保さんはその音源を持ち帰り、吟味した結果、c曲はやはり編集し過ぎ、との結論だったが、これは想定内だったので、問題は無かった。問題だったのはa曲、b曲で大久保さんとしては録音時の手触りをもう少し感じたい、との事だった。シンプルに仕上げたのはその辺りを意識しての事だったが、これは私のエンジニアリングの未熟さの所為としか言いようが無い。

 再度、音源を聴きながら打ち合わせ。修正点を確認する。ちょっとした差異だが、私にとっては大きな違い。なぜなら、今回レムスイムのアルバムをプロデュースするにあたっての致命的な欠点を自分の中で思い知ったのだ。アルバム制作の経緯にも関係するのだが、私は録音に一切立ち会っていない。

 もちろん、ミックスを続行する事は出来たが、録音に一切立ち会っていない自分と大久保さんとの温度差がこの場合、良い方向に作用するかどうかは解らなかった。

 代案として、エンジニアとして作業を続ける事も出来たが、思い切って大久保さんに提案した。「プロトゥールズ買ったんだから、自分でやってみなさい」。
 
 少し考えつつ、彼女は大海原に出る決心をし、私は今回のプロデュースという立場を降りる事にした。(ギターは数曲弾くが)

 かわいい子には旅をさせよ、と云う事か(笑)。

23:55:00 | skri | | TrackBacks
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