Complete text -- "今宵の鉄道音楽"

28 October

今宵の鉄道音楽



 こんな本(なつかしの蒸気機関車、久保田博 著)(a)を読んでいたら、無性にPaul Butterfield「Mystery Train」(b)が聴きたくなる。それにしてもこの本、このサイズの割に蒸気機関車について専門的記述やデータも多く、今読んでも飽きない。読みながら、とっかえひっかえ鉄道を連想するものを聴いていた。私なんかは、そういう音楽と言うとすぐにブルーズで、映画「Crossroad」でも印象的なシーンがあったな、なんて思いつつ取り出したのは、ハーモニカではなくウォッシュボードのレイルロード感。Bukka White「Bald Eagle Train」(c)。なんとも軽快なウォッシュボードが耳から離れないが、この七分くらいある曲の後半、突如として朴訥なメロディーが出てくるあたりはかなり気持ち良く、そして景色が変わる。が、ウォッシュボード君はかまわず盛り上がる、あきらかにトランス状態でウォッシュボードの音が歪みだす。Bukka Whiteはもっと評価されるべきブルーズマン。さて、もう少し穏やかなもの、とジャケットで選ぶ。Last Forever『trainfare home』(d)。なんといってもSonya Cohenの声が美しい、Dick Cornnettのプロジェクト。かなり狙いが明確なアルバムで、綺麗すぎる気もするが、丁寧に作ってあり聴いていて飽きない。例のレイルロード感は少しだけハーモニウムで代用。これがまた良い音だ。Last Foreverで連想したので、続いてこれも聴いてみた。Nanci Griffish with the London Symphony orchestra『The Dust Bowl Symphony』(e)。Last Foreverより、もっと明確なアルバム。さすがに声のかわいらしさには翳りがみえるが、むしろ私には今くらいが心地よい。あのナンシーももう50歳。新作も出たようである。ここで、再びハーモニカに戻る。The James Cotton Band「One More Mile」(f)。定番の一曲。やはりかっこ良い。笑う。久しぶりに他にもモダン・ブルーズでも引っ張り出そうか思ったが、突然ある曲が頭に浮かんだ。Sibelius「Symphony No.4 EN SAGA」(g)。鉄道感あるな。しかし明らかにヨーロッパの鉄道だということは言うまでも無い。で、もう一つ、思い出した。ALKAN「Le chemin de fer,Op.27」(h)。悪魔的は超絶技巧と異様な音楽性で19世紀の前衛を突き進んだ謎の作曲家、奇人アルカン!(オビに書いてあるだけで私は知らなかった、と言うか、このオビを見て買った)のずばり「鉄道」という曲。こりゃ変だな。全く落ち着かない。鉄道の発達が国家の繁栄の一つの象徴だったのだな。でも私には鉄道感皆無。そして口直しにこれを。BARTOK「Mikrokosmos」(i)。これは残念ながらセレクション。シカラムータでも時々演奏するブルガリアン・リズムも入っているが、オリジナルはシンプルで案外鉄道感あり。最後に極め付け、Two Doller Guitar『Train Songs』(j)。このアルバム、すべてが鉄道。しいていえば、ヴィンセント・ギャロから女々しい部分を差し引いて鉄道を加えたもの、又は、鉄道で移動するPAPA M、それとも、マーゴ・ティミンズを失ったカウボーイ・ジャンキーズがヴォーカリスト探しに鉄道の旅に出る、そんな感じだ。素晴らしいアルバム。最後に鉄道じゃ無いけど、これを聴いておしまい。ATAHUALPA YUPANQUI「牛車にゆられて」(k)。


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02:37:28 | skri | | TrackBacks
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