Complete text -- "私の好きな居酒屋 その一 北海道、別海町「どさんこ」"

18 October

私の好きな居酒屋 その一 北海道、別海町「どさんこ」


 折角なので、旅先で見つけた居酒屋の話でもしよう。
 二年前の話だが、当時は割とデジタルカメラを持ち歩いていたので、写真も残っているし、日付までわかる。'02年11月の上田遥さん北海道ツアーの時だ。調べてみたら、この年の秋はかなり忙しく、10月より上田遥+小松亮太の仕事がかなり多く、その合間を縫って、タンギスツのツアーもあったし、更にその合間をぬってロンサムストリングスの幾つかの録音があったりと休みが全く無かった時期だ。
 11月の中旬、大阪で小松亮太&タンギスツのコンサートを終え、次の日に北海道、中標津に到着し上田遥さんのダンス・チームに合流だが、幸いこの一週間のツアーの初日は移動のみで、サウンドチェックすらも無かった、と記憶している。中標津空港からバス移動で20:00頃別海町のホテルに到着。辺りはほぼ真っ暗でしかもこの時期の北海道はかなり寒い。昼食を羽田で取ったきりなのでかなり空腹も感じている。ホテルの人はこの辺には何も無いから、夕食はこちらで、とホテル内の焼肉、寿司、中華(なんでもやっていてそれぞれに客席エリアは仕切りが少しあり、インテリアの違うのだが、厨房は一つ)を勧めるが、せっかくの移動日のみのオフ、飲みに行かないでどうする。日曜日だからどこもやってませんよ、この町では、というホテル従業員の言葉を鵜呑みにした幾人かのメンバーはさっさとあきらめ、焼肉か寿司か、と検討しているようなので、私は盛り場の方向を従業員に聞き、外に出た。右に真直ぐ15分程歩いてセイコーマート(北海道によくあるコンビニエンス、オレンジ色の看板)の辺りが町の中心です、と言うので、早速歩き始める。が、既にセイコーマートは微かに見えている。しかしこの目的物が見えるまっすぐの15分のなんと長い事か。しかも酪農の町なので、臭い。が、10分程で町の中心部に辿り着く。小さい町だが思いのほか、開いている店も多い。定食屋も中華屋もあるではないか。さて、散策だ。規模は小さいが町は碁盤の目にかなり近いので、地理は把握しやすい。早速何軒かの赤ちょうちん発見。この場合、カラオケには要注意だ。店の佇まいを確認し、入り口で耳をすます。静かだな、と思ったら、いきなりカラオケだったり、また、突然ちょっと色っぽい格好のおばちゃんが出てきたり、と3〜4軒の店をやり過ごす。雪も少しちらつき、寒さも極まってくる。チェーン店の居酒屋を発見し、最悪の場合の押えの店の場所を確認。うろついているうちに、碁盤の目の見落としに気付く。やはり、飲み屋は少しは集まっているものだ、と、また同じ場所に戻る。路地を発見。そしてまがったところに見つけた。「どさんこ」。こういう時はどういうわけか直感が働くのか、はたまた願望か、20m先からでもこの店は間違い無い、と確信。なので、すかさず扉をあける。あたたかい。そしてその店が本当に暖かい居酒屋だと知るのに、数秒もかからず、カウンターに腰掛けた時は少し涙ぐんだ。




 寒くて手もかじかんでいるし、顔も引きつっているが、ビールを注文。寒くても北海道のビールは格別。今日は日曜日であまりねたがなくてね、という初老のマスターは白い割烹着が凛々しく、炉端やき作業の合間につかずはなれず非常によいタイミングで私に話し掛ける。カウンター隣の常連もテレビを見ながら適度にはなしかけてくる。それとなく会話も成り立つ。よかったらつまみなよ、と煮豆かなんかの小鉢をさしだしてくれたり、ビールも奢ってもらう。
 私がその時何を注文したか詳しく覚えていないが、多分寒かったので煮込みかおでん、そしてやはり北海道なので一夜干しのかれいかほっけ、は間違い無いだろう。どれもとても旨かった事はいうまでも無い。
 確か、その後熱燗にいき、閉店後、結構な千鳥足でホテルに戻ったが、15分の戻り道も全く苦では無かった。
 北海道、別海町 どさんこ。この町に訪れる機会はそうは無いと思うが、この店のこの日の事は忘れないだろう。



00:54:53 | skri | | TrackBacks
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