Archive for November 2008

20 November

高尾山のトンネルについて


 考えがまとまらず、書くのを控えていたが、今書かなくてどうする。とりあえず、筆を進めよう。二日前の日記で画像だけ載せた圏央道の高尾山トンネルの件。
 
 数日前、反対派の拠点というべきデッキが行政代執行で取り壊された件はニュースで知っておられる方も多いであろう。その日、この件に関して、いくつかのブログを検索してみたところ、思いのほか、圏央道推進派の意見が多かった。

 詳しい事は調べてはいないが、私が裏高尾によく行っていた20数年前は確かに圏央道反対の運動が地域住民の手で興っていた頃だと思う。私はその頃、住宅地図を作成するアルバイトをしていた。福生に住み、車を所有していたので、多摩地区の山間の仕事はかなりの割合でまかされていた。住宅地図なので、家を一軒一軒まわり名前を確認すれば良いだけなのだが、山間なので住宅はまばらだ。隣の家まで十数分歩く事も少なくなかった。なので、仕事とは言いながらどことなくハイキング気分で、季節によっては、新緑や紅葉も楽しめた。そんな中の仕事先で特別に思えた場所が二つある。一つは桧原村の北側(南側は奥多摩周遊道路につながる)で、地元の人に聞きながら集落を訪ねる。街灯も何もない獣道で郵便配達員とすれ違うのはなんとも奇妙だが、珍しい事ではない。都道から山道に入り30分以上も上ったところに集落があったりするのだ。しかも東京都。一軒一軒訪ねると、どこも親切に対応してくれ、お茶や茶菓子でもてなしてくれるお宅もあり、最近は足を伸ばしていないが、その後数年は自分にとっての憩いの場だった。もう一つがこの裏高尾。ここは檜原とは正反対。檜原の集落は山の中腹にありながらも、人のふれあいをものすごく感じるのに対し(隣の家まで10分は歩かなければならないのに、谷を挟んだ隣の集落の家の様子がよくわかったりするのだ)、この裏高尾は右手に中央高速が走り、その交通音もそれなりに聞こえるが、やけにひっそりとしている。山道ではないが、人影はない。新興宗教の建物もあり、仕事はすこし難儀する。二週間ほどこの辺りに通ったが、檜原のような人とのふれあいはあまりなく、仕事は終わったが、強く印象に残っているのは、中央高速と高尾山の対比なのだ。それを神々しい、というのは大げさだが、特別なもの、という印象は強い。そして、中央高速に向かっての「圏央道反対」の看板はよく憶えている。

 さて、高尾山トンネル。いくつかのブログによる推進派の意見は、早く圏央道を通せ、というものが大多数だ。都中心部の渋滞が緩和され、それに伴う、悪環境の緩和という利点。環境問題にうるさいであろう現都知事にとっては、500mくらいの山の一つ、と考えれば、どちらを優先させるかは明らかだ。その他、活動家やプロ市民を嫌悪するネット右翼系らしき記事も見たが、それはいちいち読まなかった。
 
 対し、反対派は高尾山の環境保護。Youtubeでは、今回撤去されたデッキでのライブ映像も結構あがっているが、あのような場所でライブをするというのは、いくらとなりでトンネル工事をやっているからと言って、環境に配慮しているかどうかは甚だ疑問だが、賛同者をつのるという意味では有効なのかもしれない。

 これまたいちいち調べていないが、反対派は高尾山トンネルに反対しているのであって、圏央道反対とは言ってはいなかった気がするが、どうだろう。

 結構前だが、高尾山を迂回する計画をどこかで見た事があるが、それは見当たらず。記憶によれば、その方が工期も早く、予算も少なくてすむらしい。

 現八王子市長の親族にゼネコンがいるらしく、トンネル工事を請け負うらしい。海底トンネルを掘る技術を使うと言う。このわずか3km満たない区間に莫大な費用がかかるらしい。

 筑波山、丹沢と並ぶ関東三大霊山といわれる高尾山。植物の種類が豊富でミシュラン三ツ星の認定で観光客でごった返していると言う。ただ、地質が特殊なので、それを実験すべく、いろいろな植物を植えた、との説もある。それが本当ならば、これは人間が作った自然、という事になるが、時間が経てばさほど問題ではないが、その言い分はトンネル推進派にも適用する意見だ。

 その先の計画の相模では、ゴネ得、という状況になっているらしく、逆に高尾問題が隠れ蓑になっている感さえある。

 高尾の隣、城山トンネルが工事中崩落し、その後工事再開。そして近くの沢が枯れたらしい。が、最近、沢は復活との話も聞いた。

 霊山に穴をあけるなんて、とんでもない。と思う方も多いだろうが、既にずいぶん前からケーブルカーはある。環境破壊という面ではなく、神聖ということでは、これもまた悪。ただ、それでも高尾山は生き続けて来た。ただし、日本最大の新興宗教の東京の第二の拠点八王子、霊山を怖がらないのは合点がいく。

 先にも書いた八王子市長はもともと推進派で最近の選挙が二期目?だったか。選挙結果、圏央道推進による経済効果を期待する市民が多かった、という事になる。高尾山は八王子にとっては有力な観光資源だと思うが、それを切り捨ててまでやりたいのは、このあたりのジャンクションに物流センター誘致をもくろんでいるらしい。それは、トンネル建設より、もっと不透明な環境アセスメントであることは予想がつく。

 環境アセスメント、トンネル工事の件が不透明または虚述、かもしれんが、先頃開通した圏央道から中央高速にともなう環八、国道16号、20号の排ガス数値がどれくらい下がったかどうかは見つける事は出来なかった。東名開通でどれほどの効果があるのか?

 ただ、圏央道開通で東海から関越方面の物流が経済的に効率よくなるのは事実である。

 まだまだ、思う事はたくさんある。八王子市長選では少数派になってしまった地域住民の声を地域エゴといって片付けるわけにはいかない。誰だって自分が生まれ育った場所が大切なのは、当たり前だろう。

 私だって圏央道使う事もあるだろう。しかも、家から一番近い高速道路の入り口は圏央道の青梅なのだ。

 しかし、30年ほど前のこの計画、経済優先そして利権がらみの構図、そして、現在の環境保護。だが、人間は少しずつ環境を破壊しながら生きらえてきた。共存というのは人間にとって都合のいい言葉かもしれないが、より良く生きるためにこの言葉を使うときもある。

 私は環境について日頃配慮している人間とは言いがたい。家は消費電力の多い白熱灯だし、マイ箸なんて持とうと思わないし、ヘビースモーカーでもある。だが、今回の問題は考えさせられた。高尾山、だからである。尊厳、と言ったら大げさかもしれんが、私が20数年前に感じたあの山の感覚、そういったものが薄れていくのか、という事を思った。大きくいうと、私が知る日本人が持っていた、あの感覚、尊厳、そういったものがもう必要ではないのか、いやいや、それはとても重要な事だろう、なんて自問自答しているのだ。

06:16:46 | skri | 3 comments | TrackBacks

18 November

高尾山



 

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