Archive for 11 August 2013

11 August

今日のレコード 11


 Albert King / I'll Play the Blues For You (1972)

 ああ、もう涙が出る程かっこ良い。私にとっての'70年代初期のアフロ・アメリカンの音楽の最高峰の一つ。ベタなタイトルだが、これだけの余裕の歌と極上のギターの音でなければなし得なかったレコード。バックはバーケイズ&ザ・ムーブメント、ホーンはもちろんメンフィスホーンズ、そりゃ演奏は良いに決まっている。(この時期、バーケイズはドラムスが抜けていたと思うのだが、ここではおそらくウィリー・ホールじゃないかな)だがそれにも増して(もちろん演奏あっての事だが)なによりプロダクションが素晴らしいのだ。

 1972年と言えば、スタックス・レコードにとっては後期という事になる。その後、シャーリー・ブラウンのヒットがあったとはいえ、結局'70年代半ばに倒産じゃなかったかな。だから既に内部事情は危うさを感じていたとは言え、音に対しては妥協しない姿勢はさすがのスタックスだ。

 さて、そのプロダクション。まず曲が良い。アーバン・ブルースと呼ばれるものはアルバム単位ともなると、言い方は悪いが捨て曲みたいな時間帳尻合わせみたいなものもままあるのだが、このアルバムには全くそれが無い。全てシングルカット出来そうな密度だ。で、クレジットからの判断だが、シングルカットされたいくつかの曲はアルバム用にリミックスが施されていると想像出来る。そして、曲順がまた良い。このあたりは個人の好みなのだが、私にとってはなんとも絶妙の曲順を曲間(の秒数)なのだ。

 そして、このギター。フレーズなんて3〜4しか無いのだ。なんだワンパターンじゃないか、と言ってこれをすませる輩がいたとすれば、その人は音楽を聴いていない、と言い切れる。Excuse Me と言っては絶妙の強弱でギターを弾き、"金なんか持ってないよ" と言っては強烈な切り込みでギターを弾く。B面の一曲目は疑似ライブ風だが、この曲ではジェームス・ブラウンよろしく Take to the Bridge を連呼する。そしてブリッジで6度転調し、ギターが切り込むのだ。そりゃ、カッコいいわ。

 フライングVは弾いた事が無いので、あくまでもピックアップのギブソンPUFを想像してなのだが、A面1、2曲目の極上のトーン及びサスティンはピックアップ・ポジションはフロント。3曲目はポジションはリアでボリュームを絞り気味の設定だが、ギターソロでボリューム全開。A面最後はリアでドライブさせ、B面頭の若干オケに交じる感じは案外センター・ポジションか? そして、B面2曲目から最後まではリアに切り替え、より過激に、よりドライブするギターが白眉だが、どうもこの構成もアルバム通して見事なので、プロダクションの効果かも知れないと思う程だ。

 最終曲はリトル・ミルトンの Walking the Back Street と並ぶスタックス・アーバン・ブルースの傑作 Angel of Mercy。これが最後の所為もあり、またA面に戻ってしまうのだ。この35℃越えの暑い日に既に三回リピートしてしまった。

 そういえば、この人のギターのベンド(チョーキング)は全く独特で、唯一私の知る限りだが、スティーヴィー・レイ・ボーンはかなりこれに近いニュアンスでベンドが出来たギタリストだった。ただ決定的に違うのは、アルバートのこのベンドは本人の体の一部の様で、もはや弦をベンドしている事を感じさせないくらいなのだ。

 とにかく、Excuse Me と言ってギターソロを弾きはじめ、納得させるのはアルバート・キングただ一人であろう。


 


 たまにはYoutubeでも貼るか。

 



17:55:40 | skri | No comments | TrackBacks