Archive for 21 July 2013

21 July

今日のレコード 8


 Carla Bley・Paul Haines・JAZZ COMPOSER'S ORCHESTRA / ESCALATOR OVER THE HILL [3LP] (1971)

 またしてもレッスン帰りにハバナムーンに寄り、軽く一杯。土曜日の20時過ぎだというのに客は私のみ。という事で、マスターの木下君と話が弾む。

 私が最近手に入れたストーン・ポニーズのファーストアルバムがオリジナルのモノラル盤だった、なんて話から木下君がレコード棚からリンダ・ロンシュタット関係のアルバムをいくつか出して来て聴かせてくれた。アン・サボイとのアルバムがとても良い。ロンシュタットはこのデュオアルバムでリチャード・トンプソンのキング・オブ・ボヘミアを披露していて、これがまたグッと来る、と思いつつ、酔いも少し回りつつあるか。

 私は然程熱心なリンダ・ロンシュタットの聴き手とは言えないが、アサイラムからのアルバムは6〜7枚は持っていて、どれもそれなりに愛聴したのだが、実はロンシュタットの存在に一番驚き、しかも納得したのが、このカーラ・ブレイのアルバムなのだ。

 所謂フリー・ジャズの流れの名盤としてディスク・ガイドに載っているジャズ・オペラの本作だが、フリーと思わしき部分まで相当スコアに書かれている事は想像に難く無い。が、2面冒頭のドン・プレストン(マザーズ)参加の一曲等は全くどうやって作ったの?って感じだ。

 ざっくり言うと、主演はカーラ・ブレイとジャック・ブルース、ゲスト・スターにリンダ・ロンシュタット、ドン・チェリー、ジョン・マクラフリン、ジーン・リー、冴える脇役にポール・ジョーンズ(マンフレッド・マン)、ガトー・バルビエリ、ドン・プレストンら、ボトムはチャーリー・ヘイデンとポール・モチアンが締めるが、ジャック・ブルースはベースでも大活躍である。が、とにかく参加ミュージシャンは多い。

 このアルバムの成り立ち等は検索していただければ、すぐに見つかるし、Youtubeにいくつかの音源もあるので、これ以上の説明は不要であろう。

 さて、リンダ・ロンシュタット。どういう経緯でここに参加しているかは分からないが、まあ周りがこのメンツなので、とても興味深く思ったのが最初の出会いだ。それがこの盤を手にしたかれこれ20年前くらいの話だが、今でもこうやって聴き返してもその違和感が面白い。彼女が登場するのは3面途中からなのだが、まず第一声にやられる。いきなりの無垢が全てを持って行く瞬間である。やはり歌う為にこの世にいる人なのだ。久しぶりに聞き返した今でも鳥肌が立つ。そして、その後有象無象のコーラスが入って来て彼女は巻き込まれ、ロフトの人々にのまれる。ブレイの台本どおりであろうが、相当なエネルギーが渦巻く中での一場面、ますます聴き進んでゆく。

 この三枚組で、彼女の登場は3曲程だが、とにかく初登場の一曲目で釘づけになった。ただしそこだけではなく、やはり最初から聴くのが筋というものだ。ボーン・マシーン以降のトム・ウェイツなんか相当このアルバムが見え隠れする。

 ブックレットのロンシュタットの写真にシルバー・パネルのデラックス・リバーブが写っているのだが、そのアンプのケースにLINDA RONSTADTの文字が見える。という事は当時のバックバンドもここにいたのであろう。か、たまたま同じスタジオの違う部屋だったのか、なんて想像も出来なくは無い。

 ともかく、どんな場面でも歌姫であることを痛感したアルバム。そしてやはりこの時のカーラ・ブレイの才気たるや、凄まじいもので三枚組を聴き通してしまったのだ。


 

23:55:00 | skri | No comments | TrackBacks