Archive for 22 June 2013

22 June

今日のレコード 2


 ハワイ音楽名曲全集 / バッキー白片とアロハ・ハワイアンズ [2LP] (1970)

 14歳くらいから、ニューミュージック・マガジンなんてものを読みふけっていたという所為もあるかもしれないが、私にとってのハワイアンの入り口はご多分にもれず、ライ・クーダーのチキン・スキン・ミュージックとギャビー・パヒヌイである。当時はギャビーこそがハワイの真のフォーク・ミュージックで、所謂世間で(日本で)ハワイアンと呼ばれていたものは、商業的であり、ただのBGMであり、日本人観光客向け、なんて言われてその筋の音楽ファンからは敬遠されていたものだったりもした。

 が、そんなこととは別に私が小学生の頃、おじさんの車に乗せてもらうと8トラックのテープのカーステレオでは、ラテンやコンチネンタル・タンゴやハワイアンのインストゥルメンタルが鳴り響いたのをとても良く覚えている。だから、このハワイアンを聴くと、音楽に昭和の思い出が結びついてくる。まあ、それもまた音楽の妙。

 このアルバムはベスト盤の様なタイトルとジャケットだが、バッキー白片とアロハ・ハワイアンズの当時の新録だけで作られたもので、まだ然程盛んではなかった多重録音の試みも面白く、打楽器や効果音も積極的に挿入されている。なにより、バッキーのスティールが良く歌っていて気持ちよくまさに名人芸。スティールギターも結構多重で録られているのだが、微妙にニュアンスを変えていて、同一人物が重ねているようには簡単に気づかせないように工夫されているのも一興。

 一曲目はラテンだし、その他アメリカ本土でハワイをイメージして作られた曲も多いという事もあり、そのあたりも前述のように敬遠される要素でもあったのだが、魂売り渡して、この響きを得たのなら、ロバート・ジョンソン同様だ、とでも庇護したくなるくらいの演奏がおさめられている。そして、和田弘とマヒナスターズがここから大きなヒントを得ていたことは想像に難く無い。

 20年程前に高円寺にギブソンという喫茶店があった。珈琲一杯700〜800円といういささか高い店だったが、なんとマスターの演奏付きなのだ。当時そのマスターはとうに還暦は過ぎていたと記憶するが、その昔ハワイアンやジャズのバンドで腕をならした方で、珈琲を注文すると、一曲弾きましょうか、とカウンター中にセットされたスティールギターのスイッチを入れ店内にその音を響かせる。正にこのバッキーの音に近い匂いがあったのだ。そして、私もウクレレを手に入れたばかりの時期だったのでその旨を告げると、奥からウクレレを何本か持って来て披露してくれた。最初はローGで弾いていたのだが、やはりウクレレはこれだね、と言って普通のハイGのマーチンを弾き始めた。今でもその音は脳裏に焼き付いているが、そのマスターが既に亡くなっていた事は知ったのはつい昨年のことだった。


 


04:21:52 | skri | No comments | TrackBacks