Archive for August 2013

17 August

今日のレコード 12


 LAGU2 INDONESIA DALAM KRONCONG BEAT (1985)

 静かな夏を過ごしている。今夏はフェスティバルが一本も無く、都内のライヴも少ない。かつてはニッパチと称され、フリーランスの閑散期と言われたもので、ここ数年ではそれほどでも無かったのだが8月第三週に入っているスケジュールはほぼ無い、とは言え、来週からの制作に向け、自宅システムの再構築に余念がない日々ではある。そして、午前中から動いているので、大変に汗をかく。なので、日が暮れる前にはビールを飲んでいる始末である。

 と、そんな夏だが、夕暮れ時の音楽(と言うか暮れてからも)は何と言ってもクロンチョンだ。ああ、なんて清々しいのだ。

 このアルバムはミュージック・マガジン社が大きく関わっていたスープ・レコードから'85年に発売されたインドネシアのクロンチョンのオムニバスだが、もちろん古い音源が元になっていて、解説によると1965年の録音である。どの歌手を本当に見事で、もう巧すぎて、とにかく心地よく聴き入る。そしてこれぞポピュラー音楽における最高の匿名性では無いか、と感じ入る。

 ご多分に漏れず、この音楽を知ったのはミュージック・マガジンの記事なのだが、その頃、手に入る音源はまだインドネシア版のカセットのみで何軒かの輸入盤店をまわり発見し購入。これがクロンチョン初体験となった。その後スープレコードから、インドネシアのジャイポンガンや小編成のガムランのレコードが発売され、ようやく満を持してかのクロンチョン、それがこのアルバムだ。

 ジャイポンガンやダンドゥットもそれなりに聴いていたが、やはり自分にフィットしたのは何と言ってもこのクロンチョンで、音楽的にも実は相当傾倒した時期があった。とにかくチェロ、ギター、ウクレレ(クロンチョン・ギター)のアンサンブルは見事で、他には類をみない発展であろう。チェロはベースの役割だが、かなり自由な動きで音数も多い。タムタムのように響く時も多々あり、これでもったりしないのはやはりチェロならである。ウクレレは複数あるときも少なく無く、打楽器的な役割であるが、このサスティンの少ない楽器を複数組み合わせて生まれるグルーブはなんとも心地よく、自分でも多重録音で試したものだった。ギターはアルペジオなのだが、これが所謂ポピュラー音楽のコードを低音弦からつま弾くものではなく、ソロ的な単音の組み合わせで、ビートに貢献する。この数々のフレーズは本当によくコピーしたもので、ディレイド・レゾルブが多用されているのが、特徴とも言え、そのままオブリガードになっているように聴こえる事も多い。ディレイド・レゾルブとは文字通り、遅れてきた解決、の事。ジャズでは割と速いパッセージでプリングやハンマリングを交えてこのようなフレーズを組み立てる事もあるが、クロンチョンの場合はアンサンブルとしてビートとより密接なので、ジャズでのそれよりはもっと”遅れて”聴こえるのだ。単純にどんなものか説明を加えると、そのフレーズが一度コードトーンから外れてまたコードトーンに戻り解決という事だ。たとえば、ラ・ファ#・ソとか、シ・ド#・ドとか、メジャースケール内であっても、シ・レ・ドみたいなものもそうである。ハワイアンや昔の歌謡曲でも散見されたが、ロック・フォークの時代にはそう見られず、おそらくブルースやアイリッシュの影響から7thの多用が目立つようになる。とは言え、シ♭・レ♭・ドのようなものもそう多くは無い。とにかく、このような響きがアンサンブルの中で聴こえる事が何よりも新鮮だったのだ。

 そして、それらの上にフルートやヴァイオリンが舞い、さらに優雅に歌がのる。もう時折、音楽はこれだけあれば十分だろう、と思うときすらある。

 余談だがかれこれ20年、いくつかの仕事でクロンチョン・アレンジをした事があるのだが、好評だったことは一度も無い。まだまだ精進せねば。

 
 


 

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11 August

今日のレコード 11


 Albert King / I'll Play the Blues For You (1972)

 ああ、もう涙が出る程かっこ良い。私にとっての'70年代初期のアフロ・アメリカンの音楽の最高峰の一つ。ベタなタイトルだが、これだけの余裕の歌と極上のギターの音でなければなし得なかったレコード。バックはバーケイズ&ザ・ムーブメント、ホーンはもちろんメンフィスホーンズ、そりゃ演奏は良いに決まっている。(この時期、バーケイズはドラムスが抜けていたと思うのだが、ここではおそらくウィリー・ホールじゃないかな)だがそれにも増して(もちろん演奏あっての事だが)なによりプロダクションが素晴らしいのだ。

 1972年と言えば、スタックス・レコードにとっては後期という事になる。その後、シャーリー・ブラウンのヒットがあったとはいえ、結局'70年代半ばに倒産じゃなかったかな。だから既に内部事情は危うさを感じていたとは言え、音に対しては妥協しない姿勢はさすがのスタックスだ。

 さて、そのプロダクション。まず曲が良い。アーバン・ブルースと呼ばれるものはアルバム単位ともなると、言い方は悪いが捨て曲みたいな時間帳尻合わせみたいなものもままあるのだが、このアルバムには全くそれが無い。全てシングルカット出来そうな密度だ。で、クレジットからの判断だが、シングルカットされたいくつかの曲はアルバム用にリミックスが施されていると想像出来る。そして、曲順がまた良い。このあたりは個人の好みなのだが、私にとってはなんとも絶妙の曲順を曲間(の秒数)なのだ。

 そして、このギター。フレーズなんて3〜4しか無いのだ。なんだワンパターンじゃないか、と言ってこれをすませる輩がいたとすれば、その人は音楽を聴いていない、と言い切れる。Excuse Me と言っては絶妙の強弱でギターを弾き、"金なんか持ってないよ" と言っては強烈な切り込みでギターを弾く。B面の一曲目は疑似ライブ風だが、この曲ではジェームス・ブラウンよろしく Take to the Bridge を連呼する。そしてブリッジで6度転調し、ギターが切り込むのだ。そりゃ、カッコいいわ。

 フライングVは弾いた事が無いので、あくまでもピックアップのギブソンPUFを想像してなのだが、A面1、2曲目の極上のトーン及びサスティンはピックアップ・ポジションはフロント。3曲目はポジションはリアでボリュームを絞り気味の設定だが、ギターソロでボリューム全開。A面最後はリアでドライブさせ、B面頭の若干オケに交じる感じは案外センター・ポジションか? そして、B面2曲目から最後まではリアに切り替え、より過激に、よりドライブするギターが白眉だが、どうもこの構成もアルバム通して見事なので、プロダクションの効果かも知れないと思う程だ。

 最終曲はリトル・ミルトンの Walking the Back Street と並ぶスタックス・アーバン・ブルースの傑作 Angel of Mercy。これが最後の所為もあり、またA面に戻ってしまうのだ。この35℃越えの暑い日に既に三回リピートしてしまった。

 そういえば、この人のギターのベンド(チョーキング)は全く独特で、唯一私の知る限りだが、スティーヴィー・レイ・ボーンはかなりこれに近いニュアンスでベンドが出来たギタリストだった。ただ決定的に違うのは、アルバートのこのベンドは本人の体の一部の様で、もはや弦をベンドしている事を感じさせないくらいなのだ。

 とにかく、Excuse Me と言ってギターソロを弾きはじめ、納得させるのはアルバート・キングただ一人であろう。


 


 たまにはYoutubeでも貼るか。

 



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01 August

8月 ライヴ・スケジュール


 9月が怒濤なので、今月は制作は多少ありますが、お盆は休みます。


 8/2(金) スーマー&桜井芳樹with椎野恭一  神奈川 横浜 反町 NO BORDER


 8/9(金) カルメン・マキ  神奈川 横浜 ドルフィー


 8/23(金) スーマー&桜井芳樹  東京 阿佐ヶ谷 SOUL玉TOKYO


 8/27(火) カルメン・マキ  東京 吉祥寺 ROCK JOINT GB


 詳しくはblocにて。よろしくお願いします。


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