Archive for 17 August 2007

17 August

CHICKEN SKIN MUSIC (Remaster)

 
 

 巷で賛否両論のRy Cooder/Chicken Skin Music紙ジャケット・リマスター盤を聴いてみた。

 最近はCDを買うと、帰りの道すがら車の中で聴いてしまう事が多い。車載のオーディオシステムはたいしたものではないが、なんだかんだと音源を聴く事が多いので、特性を差し引いた上での仕事上のリファレンスシステムとも言えなくはない。が、ちょいドンシャリで7〜8Khzあたりが耳につく。そして、今回もまず車の中で聴く。

 The Bourgeois Bluesのイントロでレベルをかなり突っ込んでいるのがよく解る。マンドリンの音(マンドラ?)のピークが自分の記憶と大分違っている気もしたが、前述のようなカーオーディオの特性と、そして何よりかつて随分聴き込んだものだが、ここ十数年聴いていなかったアルバム、だという事もあり、帰路30分程は「やはりいわずもがなの名盤」と内容を再確認。それから、どちらかと言えば、否の意見をネット上で目にしていたので、覚悟していた所為か、一聴した時はさほど驚かなかった。

 帰宅後、ラジカセで小さい音で二回程聴く。アコースティック楽器の音がやけに近い。が、小さい音なので、さほど音質は気に留めなかった。が、レベルの所為か曲間の長さがしっくり来ない。でも、ここまで久しぶりに3回聴いて、ようやく自分の中でChicken Skin Musicが蘇った。

 さて、ようやく通常の音量、いつもの作業用システムでこの音源に向かい合う。結論から書いてしまうと、このリマスタリングは予想を超えた醜さ。極端に言うと生で録っている音をわざわざインブリッジピエゾピックアップの音に近づけて、音圧上げ歪み気味にしたとでも言おうか。またはライ・クーダーがネットショッピング総額8万円でアコースティックギター、マンドリン、バホ・セスト、ティプレ等を購入し、作り上げたアルバム(それはそれで面白いか。そしてそれでも名盤)に成り下がった。要するに弦の響きはやたら派手だが、新品の弦がびんびん鳴っているだけで、空気感が薄いのだ。弦だけではない、The Bourgeois BluesのMilt Hollandの絶妙さは無視された定位にも聴こえる。コーラスもリードヴォーカルに対しての思いやりが物凄く欠けているようにも聴こえてしまう。クーダーの意図以上にそこから垣間聴こえるすべての情報がこのアルバムを特別にしているのだが、ここにはそれが無い。

 そして、アナログを聴き直した。私が持っているのは当時の日本盤なので、米盤に比べれば音質は劣る。ちょっと一幕かかって聴こえるし、カッティングレベルもちょっと低いか。それでも十数年ぶりにきちんと聴くアナログのChicken Skin Music、こんなにも弦の響きが豊かで、その空気感がこのアルバムを作り上げていることを再確認し改めて感動というか落涙寸前。Always Lift Him Upの間奏(Kanaka Wai Wai)に入るところはこの空気感が不可欠でリマスターCDは妙に不自然に聴こえる。そしてB面の流れはリマスターでは完全にYellow Roses〜Chloeが浮いている。最後のGoodnight Ireneのクーダーの歌いだしすら、いやらしく聴こえてしまうのだ。

 音が変わったところで、名盤は名盤と言いたいところだが、今回ばかりはそうも言えまい。20世紀後半ポピュラー音楽の最高の一枚の一つなのだ。一番大事なところをどこにやったんだ?

 このアルバムに人生を変えられた人は少なくは無いはずで、かく言う私もその一人だが、これは悲しすぎるな。



 大分前だが、エリック・クラプトンのアンプラグドを聴いた時、アコースティック・ギターの音のひどさに驚いた。そしてそれがまた現在のアコースティックギターブームの一端だと云う事にもまた驚いた。が、アコースティック・ギターの音がこういう感じで認識されつつあることも思い知った。

 
 ただ、前述した空気感から垣間聴こえる歴史とここに至った過程が邪魔な方はこのリマスターをお勧めする。乱暴に言うと一枚の新譜として、そこら辺のアルバムと同一線上に並べる事が出来る。
 
 でも結果、それでも好きになった人にはやはりこのリマスターではないものを聴いてもらいたいものだ。

 
 あまりの事だったので、次はJAZZを聴いてみようと思う(泣笑)。

01:36:44 | skri | No comments | TrackBacks